こんにちは、Pythonエンジニア育成推進協会 顧問理事の寺田です。私は試験の問題策定とコミュニティ連携を行う立場です。
このコラムを読んでいる方は、PyCon JPやPyCon APACについて聞き馴染みがあると思います。
PyConは世界各国で開催されており、日本で行われているのがPyCon JPです。PyCon APACはアジア太平洋地域で開催されるもので、開催地は毎年持ち回りで行われます。日本では2013年と2023年に開催されました。
以前のコラムで少しだけお話しましたが、このPyCon APACが2026年1月から新たな形態に生まれ変わりますので、今回はそのお話をさせて頂こうかと思います。
■PyConはどこで開催されているか
Python Software Foundation(PSF)は、世界各国でPyConと呼ばれるカンファレンスイベントを年に1回開催することを推奨しています。日本の場合はPyCon JPとして、年に1回開催していますし、PSFの本拠地である北米では4月か5月頃PyCon USが開催されています。それ以外でもヨーロッパを含めた各地で定期的に開催されています。ただ、国や地域によっては定期的な開催が難しいこともありますので、2年に1回行うという国もあります。
■アジア全体を対象としたPyCon APACとPyCon JP設立のきっかけ
さて、昨今、アジア圏においてもコミュニティが増え、イベントも活発に行われるようになっています。
アジア全体のイベントとしてはPyCon APACというものがあります。このイベントはPyCon JPが始まる以前の2010年にシンガポールで開催されたのが初めてで、それを機に徐々にアジア圏にPyCon文化が広がり、発展していったという流れがあります。日本でもPyCon APACを2013年と2023年に主催国として対応しています。
私自身はPyCon JPの立ち上げに携わってきましたが、そのきっかけとなったのがこのシンガポールで開催されたPyCon APACです。このイベントへの参加をきっかけに、日本でもPyConを開催できないかと考え、運営メンバーとして徐々に具体的な形を作り、PyCon JPを作り上げていきました。
■アジア圏におけるPythonコミュニティを取り巻く状況と思い
近年、各国でコミュニティが成長し、活発に活動がされるようになったとはいえ、アジア圏においては国や地域によってはカンファレンスイベントを定期的に行うには難しいという国もあり、いろいろな状況がアジアで生まれているように思えます。私としては、アジア圏において、もっとPythonコミュニティを広げ、カンファレンスなどの開催を継続的に行えるようにしていきたいと考えています。
現状、Pythonのコミュニティの中心となっている地域はアメリカやヨーロッパです。
PyCon USに参加してみるとわかりますが、Pythonの開発者に携わっている方たちがたくさん集まっていますし、PSF自体がアメリカにある法人です。そのため、北米を中心とし、他にはヨーロッパ周りにコアデベロッパーが集中しており、それ以外のアフリカ地域や南米地域、アジア地域といった場所ではどうしてもプレゼンス自体が上がりにくく、1歩出遅れている状況です。この状況からグローバルなPythonコミュニティからはなかなか目を向けてもらいにくいのではないかと感じています。
だからこそ、アジア地域のPythonコミュニティをもっと広げ、継続的なカンファレンスの開催を実現し、グローバルな注目を集められるようにしたいという思いを抱えてきました。
■アジア圏でのPythonの活動をより活発に、PAO立ち上げ
そんな中、同じ想いを持つ方々と協力し、2024年10月にPython Asia Organization(PAO)を設立することになりました。
PAOの設立に際し、2025年3月にフィリピンで開催されたPyCon APACでPAOが計画している今後の活動方針を共有し、ディスカッションを行っています。PAOの代表であるIqbal Abdullah氏は最後にPyCon APACを終焉し、今後はPAOを中心としたアジアの新たなカンファレンスを作っていくことを発言し、一定の賛同を得ることができました。
これまで15年間APACとして動いており、それなりの知名度を上げていたPyCon APACに変わるものであるというと大げさかもしれませんが、今後は置き換えのような形でPAOが中心となって行うことになります。
PyCon APACは毎年、開催地を決める際にどこかの国に手を挙げてもらうことで成り立ってきたイベントでした。イベントの内容を決めるルールには厳密なものはなく、最初の頃はシンガポールで立ち上げたLiew Beng Keat氏がこういう形で行うのが良いのではないかというアドバイスの下、進んでいきました。
Iqbal氏がAPACを引き継ぎ、個人で活動しながらいろんな地域の人と協力しながらやってきており、どちらかといえばと個人活動といえるくらいには偏っていた部分があります。
今回、NPO法人としてPAOを立ち上げたことで、PAOを中心とした新たなPython ASIAとして進めていくことになります。
PyCon APACのこれまでの歴史を知っている人からすると、名前を変えることに理解を寄せてもらえるとは思いますが、知らない人からすれば一体何のイベントなのだと思うかと思います。
今後はPyConという冠がつかないカンファレンス名となりますが、これまでと同様、PyConのアジア版だと思って参加してもらえればと思います。
なお、PAO自体は3人で立ち上げ、現在は4名で運営しているという小さな組織ではありますが、私はここでファウンダーであり、立ち上げメンバーであり、今現在ボードメンバーであるという立場に立つことになりました。
Pythonエンジニア育成推進協会は立ち上げ初期から賛同しています。今後のアジアを含めたPython業界が盛り上がるよう、応援を続けるためにもゴールドスポンサーとしても協賛しています。
■海外カンファレンスの参加はPythonコアデベロッパーと出会える可能性も
とはいえ、いきなりアジアのカンファレンスに参加することを難しいと考える人は多いと思います。
過去のPyCon APACでは、海外からの参加者はそれなりに多く、日本からも毎年、大体10名程度は参加がありました。
そのため、現地でも多少は日本語でのコミュニケーションをとることができると思います。新しい刺激を貰えるチャンスになると思うので海外のイベントに行ってみると面白いと思いますので、ぜひご検討ください。
実はアジア圏からもPythonコアデベロッパーとなった方が現在3、4名おり、日本や韓国に住んでいる方もいます。
韓国在住のドンヒ・ナ氏はPythonの仕様を最終決定する5人で構成されるのチームで活躍されています。また、シンガポールにいるKen Jin氏はコアデベロッパーとしてすでにいろいろな実績を持って今も活躍されています。
10年前のことを考えれば、アジアからコアデベロッパー入りすることはなかなかありませんでした。近年になって徐々に活躍されている人が増えており、今後も活躍し続けてほしいという思いがあります。アジアから世界に向けて頑張っている方々についてもイベントを通じて知ってほしいと思いますし、彼らの活動も広く知ってもらいたいと考えています。
国内にいるとPython業界で活躍している人やデベロッパー側にいる人と出会うには難しい面があります。また、海外に出たとしても、日本語でコミュニケーションを取れる機会もなかなか見つからないこともあります。こういったイベントに参加すると、Pythonに深くかかわりのある人と出会うことができますし、どういった活躍をしているのか知るチャンスです。ぜひ参加していろんな方と、コミュニケーションをとっていっていただければ、面白いチャンスを得られる機会になると思います。
■今後のPAOイベント
まずはPAOが主体となる初めての現地イベントとして、2026年3月21日、22日にマニラにおいて、PythonAsia 2026を開催することが決定しています。現在は現地のメンバーと連携し、役割分担を模索しながらイベント開催に向けて動いています。
また、その前にはオンラインイベントとしてPythonAsia Online Charity Talk H2を1月31日に開催します。Zoomで参加できますので、気軽に登録してもらえればと思います。
こちらのチャリティイベントではPAOの活動資金の捻出も目的のひとつではありますが、アジアに限らずいろんな人に参加してもらいたいというのがあります。そうしていくことで、アメリカやヨーロッパなど幅広くコミュニケーションを取れる人をどんどん増やし、そういった方たちとやり取りできるような力を得ていくことも考えています。
チャリティトークには、先ほど名前を出したKen Jin氏はもちろん、日本からはkomo_fr氏、Maaya Ishida氏といったPyCon JPおなじみの方々も登壇します。英語でのトークにはなりますが、翻訳を使いながら聞いて頂ければある一定のレベルでご理解いただけるのではないかと思います。
うに思っています。
今回はPAOと、PAOが主催するPythonAsia 2026、PythonAsia Online Charity Talk H2のお話をさせていただきました。是非、こういった機会に参加してもらい、少し海外にも目を向けていただいて、Pythonのことをより知っていただけるといいかなという風に思っています。
・PythonAsia Online Charity Talk H2(日本時間:1月31日(土)14時から)
PythonAsia Online Charity Talkは、アジア地域の開発者コミュニティを支援するためのチャリティイベントです。今回は、Pythonの言語そのものから、Web、インフラ、AI活用まで、各分野で着実に実績を積み上げてきた5名のスペシャリストをお招きします。
チケット購入ページ: https://events.pythonasia.org/charity-talks-h2-2025/
・PythonAsia 2026(2026年3月21日、22日 マニラ)
以前はPyCon APACとして知られていたこのカンファレンスは、開発者、学生、教育者、研究者、そして業界リーダーたちが協力し、アイデアを交換し、永続的なつながりを構築するために一堂に会する長い歴史を持っています。その目標は、アジア太平洋地域全体でPythonとその周辺技術を探求し、議論し、そして応用するための場を作ることです。
