PyCon US 2021体験レポート「PyCon US 2021のトーク紹介」

日本時間の5月12日から18日まで、PyCon US 2021がオンラインで開催されました。様々なトークの中から、Pycon初参加の著者が選んだものを4つご紹介します。
https://us.pycon.org/2021/

Welcome to PyCon US!

初日のトークイベントは、日本では金曜の深夜0時から始まりました。トップバッターはカンファレンスチェアの Emily Morehouse による「Welcome to PyCon US!」です。開始時間になりトークルームを開いてみると、参加者が次々に「Morning fron Seattle!」のように、時間帯と場所をアピールする挨拶をチャットに書き込んでいました。流れていくチャットを見ている限りでは、どうやら夜の人はほとんどいないようでした。地球の裏側からの参加者が少なかったのか、あとから録画で見るつもりだったのかもしれません。プレゼンターのEmily MorehouseからはPyCon US 2021について全体的なガイダンスが伝えられました。そしてPythonに関わる人たちからの簡単な挨拶のあと、ビジョナリースポンサーであるMicrosoft社のDan Taylerから、同社のPythonへの取り組みが紹介されました。最初から最後まで好意的なチャットばかりで、こんなに良い雰囲気なのかと感心しました。思っていた以上に参加者の一体感がありました。

Keynote – Robert Erdmann

ウェルカムトークと同じ枠内で引き続きキーノートが始まりました。ここではRobert Erdman(アムステルダム国立美術館のシニアサイエンティスト、アムステルダム大学の正教授)から、自身が携わっている「Operation Night Watch」プロジェクトが紹介されました。このプロジェクトは日本でもITニュースになったことがありますので、ご存知の方も少なくないと思います。日本語訳では「夜警作戦」でしょうか。これは画家レンブラントの絵画「夜警」の経年変化を追跡し、保存するプロジェクトです。その様子は美術館内で公開実演され、さらにオンラインでもリアルタイムで成果を見ることができます。

こちらのキャプチャは、絵画の調査方法やシステムの構成を説明されているところです。絵画の撮影や、成分の解析などを行う手法や実際の様子が紹介されました。

このプロジェクトで撮影された画像はこちらのサイト( hyper-resolution.org )で閲覧できます。絵画をかなり近くまでズームできる体験が素晴らしいです! 絵の具の剥がれ具合まで目で見て分かりますので、美術館で実際に見るよりも細かく見えているのだと思います。最終的な画像のサイズは23万1,250ピクセル x 19万3,750ピクセル(5.7テラバイト)もあり、24列22行(528枚)の写真を最後に組み立てる処理が一番チャレンジングだったそうです。トーク中に本人や参加者から参考リンクが投稿されたので、実物を確認しながらトークを聞くことができました。これはオンラインならではの体験だと感じました。トーク終了時には画面にFAQ(ZOOM)へのリンクが表示され、そちらで質疑応答が始まりました。最大で200人以上の人がFAQのビデオチャットに参加していました。常に何人もの人が発言許可を求めるために手を上げて順番待ちをするほど人気でした。

Lightning Talk

ライトニングトークでは次々とプレゼンターが変わり、様々な人から様々な話(と様々な英語のアクセント)を聞くことができました。ライトニングトークは自分以外の誰かが興味を持つようなトピックであれば、5分間誰でも話すことができます(予約制です)。自分が書いたコードの紹介に限らず、他者から学んだ小さなテクニックの紹介でも構わないそうです。今回初めてイベントで話すという人も何名かいました。初心者でもウェルカムな文化はとても良いなと思いました。ラテンアメリカやチリなどのコミュニティから、現地のPyConやコミュニティ活動の紹介がありました。CommitCanvasというコミット周りの処理を便利にするツールの紹介がありました(チャットで「それはセンチメント分析と呼ばれるものだね」と補足してくれる人がいるような、やさしい世界)。Jupyterの便利な使い方のプレゼンではたくさんのデモが駆け足で行われましたが、5分間でそれらを網羅するための事前準備が上手だなと思いました。Python3.6で導入されたf文字列(f-string)を紹介する人もいました。個人的に一番良かったトークは、Python以外の言語でも使えそうな、多数のgitリポジトリを一括で管理する方法についてのトーク(How to Maintain Many, Many, Many, Many… Many Git Repositories?)です。プレゼンターはPython 3.9のリリースに伴い300以上のリポジトリでPythonをアップデートする必要があったそうですが、app-reposというコマンドラインアプリを作って一括操作をしたとのことでした。

pyKnit: math tools for knitters

著者の趣味に傾倒したトークです。編み物(knitting)はプログラミングなんて無関係な家庭的趣味のように見えますが、実は数学やアルゴリズムが大いに関わっています。プレゼンターのTerri Odaは技術イベントの待ち時間に編み物をした際に、「何を編んでいるの?」「私もこれを編んだの」と多くの声をかけられたそうです(著者も病院の待合室で似たような経験があります!)。そこでPythonと編み物の両方を愛する人が思いの外たくさんいることに気づき、編み物をする人のためのツール「PyKnit」を作ろうと思い立ったそうです。利用者はJupyterノートブックを使って、自分に合わせたインタラクティブな編み図(レシピ)を作成することができます。

 

これが編み物のレシピであるKinning code(編み図)です。編み物をする人はこれを見てそのまま作るのではなく、自分のサイズに合わせてカスタマイズする人がほとんどです。その際に、シェイプの作り方や、模様の配置、毛糸がグラデーションの場合は色の出方などを手計算して自分用の編み図を考えます。

 

アメリカなどでは編み図を読むよりも簡単な文章での手順書(画像右にある暗号のような英文)が使われることが多いのですが、Terriはこれをプログラミングのアルゴリズム(画像左)で表したみたいですね。この中の数値を可変変数で変えていけば、自分用のレシピが出来上がるというわけです。他にも様々なカスタマイズ機能がある(+追加開発を予定している)そうです。Terriが編み物ツールの作成にOSSを選んだ理由は、利用者が好きにカスタマイズできるようにするため、そしてPythonを選んだ理由は、Jupyterの使い勝手が良かったためとのことでした。

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