2025年の振り返りと2026年の展望

こんにちは、Pythonエンジニア育成推進協会 顧問理事の寺田です。私は試験の問題策定とコミュニティ連携を行う立場です。

2026年に入りましたので、2025年のPython業界の振り返りと、2026年の展望についてお話したいと思います。

■2025年の振り返り

2025年10月に新しいバージョンとして、3.14が出ました。3.14ではテンプレートストリング(t-string)という新たな機能が加わり、Pythonの実装系においては今後、新しい実装の形が出てくるかと思われます。

それ以外にも速度アップに関しては、GILの除去やフリースレッティングの挑戦的な部分が実際に使えそうなレベルになってきたという段階に入りましたが、恩恵を受けられるようになるのはもう少し先になりそうです。

新しいものをどんどん入れていくというよりも、適切に、順番を守って着実に進化していくというPythonの姿勢は、ここ数年で変わりはなく、安定して長く使えるプログラミング言語であり、実装できるものであるということが望んでいるということになるかと思います。

  • 3.14で注目された新機能 t-stringについて

t-stringの記述自体はf-stringと似ていますが、テンプレートオブジェクトとして返ってくるものです。実際に標準ライブラリで活用されているという段階ではありませんし、これによってプログラミングや書き方が大きく変わったかと言われると、現時点ではそうではありません。ある意味、準備段階と言えるでしょう。

今後期待されているのは、テンプレートエンジン(例:jinja2など)を入れるまでもないようなHTMLを出力したいときなどに、t-stringを上手く使って出力してくれるような機能が簡単なフレームワークに内包されること、もしくは独自の軽量テンプレート言語が生まれることではないかと思っています。

それ以外にはSQLの構文の中に上手くt-stringを使うことで出来ることの可能性も見えていますので、現在、色々なライブラリで実験的に試されています。

なぜそういったことが必要とされるのかといえば、HTMLやSQLに、ユーザーが入力したものを直接埋め込むようにすると、クロスサイトスクリプティングやSQLインジェクションといった脆弱性が出る可能性があるため、f-stringは使うことができません。これに関してはフォーマットメソッドも同様のことが言えます。ですが、f-stringに似たt-stringで書けると、構文が分かりやすくなるため、そうしたことができるように準備を進めることで、サードパーティ製ライブラリなどに使われていくという未来が予想されています。

また、これもまだ予想の範囲ではありますが、t-stringのリリースによって、今後、Python内部の実装使われていく可能性もあると考えています。

例えば、Pythonの標準ライブラリであるsqlite3がt-stringで構文を書けるようになったり、内部で使うときに今までは違う方法で実装されていたものをt-stringに置き換えたりといったことが徐々に行われていくという可能性は比較的高いのではないかと思います。

t-stringは今後、新しい発想と活用によって「こういうものができるじゃん」、「JavaScriptやTypeScriptでしていたことが容易にできるんじゃないか」ということが実現されていくのではと期待されています。これから全体的にどのように受け入れられ、広がりを見せていくのか。今年や来年への楽しみにつながるかと思います。

  • Pythonイベントの変化

PyCon JPはこれまで東京で行われていましたが、2025年は広島で開催されました。これはPyCon JPに深く関わりがある私としては、個人的に大きな関心ごとになりました。

日本においてはいろいろなものが東京中心に動くことが多く、エンジニアも東京に集中しています。それが今後、各地で大小様々なPythonイベントが展開できる可能性ができたことは大きな一歩ですし、情報交換ができる場所が各地に増えていくこと自体とてもいいことだと感じています。

コロナ禍の騒ぎが落ち着いてから、日本だけでなく、海外においても数多くのイベントが復活しています。もちろん無くなったままのものもありますが、新しいものも生まれ始めており、本当の意味で昨年はイベント復活の年になったのではないかと思います。

  • より高度なコーディングを可能としたAIエージェントの浸透と懸念

2024年あたりから補助的にAIを使ったコーディングをしていた方もいますが、2025年はエージェント化が進んだことでより高度なコーディングができるようになったため、AIエージェントを使う方が増え、市民権を得つつあるようです。いわゆるAIエージェント元年といえるような1年になったように思います。

これは見方によってはAIにコーディングをさせることが当たり前になったとも言えますが、一方で、AIがやることの曖昧さがまだあるため、AIのみでしっかり機能させるものを作るには難しいのではないか、ちゃんとしたコードになっていないのではないかといった意見や懸念も当然あります。

まだ実験+αの段階なんだろうと思いつつも、多くの現場で利用が進んできているというのも確かな事実かと思います。実際、2025年は私やその周辺でもAIエージェントを使ったコーディングをする世界ができてきており、他の多くのプログラマーやIT系エンジニアも同様の変化があったのではと感じています。

  • エンジニアの在り方の変化に伴って、基礎力を身に付けることがより重要に

2025年は当協会のPython試験とAIの関係性を考えることもありました。

というのも、AIを使ってコーディングができたとしても、その結果が正しいものかわからない、もしくは読めないといったことや、適切な指示ができていないということが、実際の現場で起こっているためです。

私自身、AIを利用してコーディングを行いますが、自身の知らない領域や知らない言語でプログラミングさせた場合には、AIエージェントに適切な指示を与えられていないと感じることがあります。そうなると、出されたコーディング結果の正確さを判断することも、デバックをすることもできません。

ですが、私自身が詳しいPython言語や領域に関することでAIエージェントを使ってコーディングさせてみると、適切な指示やレビューをすることができますので、それなりに早いスピードで品質の高いパッケージやプログラムを作ることができます。

つまり、2026年2月時点でのAIエージェントは、知識がない分野において、きちんとしたものはまだ作れないということです。だからこそ、基礎力をつけておくことの重要性を、試験問題を作る立場としても実感しています。

では基礎力をつけるにはどうすればいいのか。これはプログラミングの文法を覚えることはもちろんですが、文法に限らず、システム周りの構造的な理解などもとても重要になってくると感じています。

2025年はプログラマーの周辺の世界、特にシニア以上のエンジニアにおいてはAIによっていろんなことが大きく変化し、働き方が変わりました。それに伴い、ジュニア層や、これから勉強をし始めるという人たちにとって、2026年、どのように学んでいくか、そして、学ぶ意義は何かといったことに少し困るような時期になるのではないかと感じています。

■2026年のPython業界の展望

2026年10月頃にPython3.15がリリースされる見込みです。

現在は、前回のバージョンでやり残したフリースレッティングやGILへの対応を次バージョンでどう進めていくのか、新しい機能は何を入れるのかといったことを提案し、策定しながら開発を進めている時期です。

ご存知の通り、Pythonは新バージョンのリリースは年1回行われ、その後、5年間サポートが行われます。

Pythonはずっと相互換性をとても大事にしており、特殊なもの以外ではこの方針が崩れることはないかと思います。

フリースレッティングの標準化が進んだ場合、古いサードパーティ製ライブラリが動かないという問題は当然出てくるかと思いますが、Pythonの開発者たちはそうならないよう、有名ライブラリの開発者と丁寧に連携しながら開発を進めていますので、大きな心配はいらないのではと考えています。

■2026年のAIの動向

プログラミング業界を含め、様々な業界にAIは進出していますが、その基礎にPythonがいることについてはしばらくの間は変わらないでしょう。それはAIを支えるLLMの世界においてPythonが1つの重要なプログラミング言語になっていることは事実ですし、LLMやAIのシステムをカスタマイズするにはPythonの力が必要だからです。

AIは私たちの世界において、重要な要素としてこれからの1年、目まぐるしい進化を遂げるのではないかと思います。あるところで言われるようなAI疲れをどう乗り越えるかも問われることになるかと思います。

  • オープンソースとAI 

オープンソースの世界において、AIとの関係性が今後どのように変化し、どう付き合っていくのかはこれから徐々に見えてくるのではないかと思っています。

例えばCPythonを開発する際、現段階ではAIネイティブな開発はもちろん行われていませんし、それに強く反対する意見も出ています。これは、AIが入ることで何が起きるのか分からない、または変なものが入ってしまう可能性が懸念されているためです。実際、有名なライブラリで、AIを使用したことによる悪影響が見つかったというニュースを見かけるようになってきました。

Pythonはしっかりとした人材によるチームがありますので、今の段階では心配するようなことはないのではと思います。

ただ、全体的に見たときに、AIとの付き合い方を考えていかなければ、よくない影響が出てしまうこともあるのではないかと感じています。2026年以降はちょっと注視して、AIとの付き合い方を問うていく必要はあるかと思います。

  • AIとの付き合い方

AIエージェントの台頭によって、ある一定レベルの水準のコードを早く出してくることができるようになったものの、やはり変なものが入っていないかを確認するには人手が必要です。

この確認をAIにさせることを考えたとして、AIエージェントにそれを指示すると、ものすごい勢いで懸念点を含めたフィードバックを出してくれます。こういった何でもかんでも指摘するような大量のフィードバックが戻ってくることに人間側が疲弊しつつあるといった事象もあります。

ところでAIはPythonやTypeScriptを良く知っているためか、何かを作る際にAIエージェントはこのどちらかを選択しがちなように感じています。もちろんこれは、私がやるからそうなっているという可能性はありますが、Webサービスを作る時には比較的、バックエンドにPython、フロントエンドにTypeScriptという提案がよくされています。

  • AIを活用したプログラミング学習

ある一定の文法を学んだら、AIに少しコードを書いてもらい、自分なりに理解していくということが可能ではあります。ただ、その理解度が本当にどこまで深いものになっているのかは、しっかり見つめていく必要です。

やはり、その物事自体を知らなかったり、システムの構造を知らなかったり、プログラミング言語の基本的なことを知らない中では、AIを使いこなすにはまだまだ難しいです。AIで何でもかんでもできるという時代にはまだ遠い今、基礎力をつけることの重要性は大切です。そして、その基礎力をつけるためにAIを活用することができます。

■2026年のPython業界イベント動向

日本全国でイベント開催予定が出始めています。PyCon JPは広島で8月開催が決まっています。

私は今年も積極的にイベントに参加していく予定でおり、まずは3月後半にマニラで開催されるPython Asiaに行きます。

それ以外では、PyCon USが5月にカリフォルニア州ロングビーチでの開催が決定しています。Euro Pythonは7月にポーランドで開催するとアナウンスがありました。

先ほどのAIの話でもあったように、AIだけで勉強するには何かと難しく、そしてAIを便利に使えば開発スピードは速くなってもそれだけでは新しいものを生み出すことは現状できません。だからこそ、カンファレンスに参加することでいろんな人と会い、話すことで新たな学びや発見を見つけられると思います。

初心者だからカンファレンスには出てはいけないとは思わず、カンファレンスやイベントに挑戦して人に会っていくという目標を立ててもらえればと思います。

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