こんにちは、小澤です。
これまで、AutoMLツールやPythonによる機械学習のライブラリをいくつか紹介してきました。しかし、どんなに高度な分析手法があっても、そもそも「データがなければ何も始まらない」という現実があります。新しい価値を生み出すには、企業や組織が保持している内部データだけでは足りず、ニュースサイト、製品ページ、SNSなど、インターネット上の「オープンな情報」をうまく収集して活用する必要がでてきます。
そこで今回から、「スクレイピング(Webスクレイピング)」と呼ばれる、Webサイトからデータを自動で取得する技術について解説していきましょう。教科書『Pythonによる新しいデータ分析の教科書(第2版)』では「スクレイピング」(274ページ)に関連した内容です。
スクレイピングとは
スクレイピングは、もともと「こすり取る・削り取る」という意味を持つ言葉です。ITの分野では、WebページのHTML構造を解析し、特定の情報を抽出して利用する手法のことを指します。
たとえば、次のようなシチュエーションを想像してみましょう。
- 新聞社サイトから、毎朝のニュースヘッドラインだけを一覧化してSlackに通知したい
- 通販サイトから、自社商品の価格変動を毎日モニタリングしたい
- 市役所の公式ページから、更新されたイベント情報を自動で取得したい
これらはもちろん人手でも可能ですが、毎日となると手間もコストもかかります。スクレイピングを使うと、こうした作業をプログラムで実行することができます。
なぜスクレイピングなのか
AIやデータ分析の世界では「良いデータを、どれだけ早く手に入れられるか」が成果を左右します。近年スクレイピングのニーズが高まっているのも、次のような理由からです。
- データの主戦場がWebに移った
SNS投稿、ブログ、ショッピングサイト、地域イベントなど、最新情報の多くがWebでしか公開されないようになっています。 - APIではカバーしきれない現実
WebサービスにもWebAPIとして提供されているものがありますが、多くのWebサイトはAPIを提供していません。スクレイピングは、公開されている情報をHTMLから直接取得する手法として機能します。 - 競合・市場の可視化に使える
他社製品の価格、レビュー数、イベントの開催頻度など、Web上の動きを定期的、定量的に把握できるため、マーケティングや商品戦略にも応用可能です。
スクレイピングでできること
スクレイピングは業務への応用範囲が広く、以下のような活用例が挙げられます。
- 価格・在庫モニタリング
- 競合商品の価格変動を自動チェック
- ECサイトで「在庫が復活したら通知」などのトリガーに
- ニュース収集・要約
- 各種メディアサイトから特定ジャンルの記事を抽出
- ChatGPTなどと連携して要約付きでSlackに配信
- イベント・行政情報の収集
- 市町村・自治体のページから、広報・災害・イベント情報を自動収集
- 手動で確認しに行く必要をなくす
- SEOやコンテンツ分析
- 自社・他社サイトの見出し構成やタイトル傾向を分析
- 検索結果ページから取得し、検索順位の変動チェック
- リスト収集(SNSアカウント、メール、URLなど)
- 特定のジャンルの企業・店舗一覧を自動で取得してリスト化
- 営業活動やマーケティングリサーチに応用
スクレイピングに必要な知識
スクレイピングには一定の技術的な理解が必要ですが、Pythonを使えば意外と少ない知識で構築できます。最低限、以下の3つの要素を押さえておきましょう。
- HTMLの構造
- Webページは基本的にHTMLで構成されており、<div>, <p>, <a>, <table>といったタグで囲まれています。
- 欲しい情報が「どのタグ」にあり、「どんなクラス名」で識別できるかを見つける作業が重要です。
- Pythonの基本文法
- 変数、ループ、条件分岐などの基本的な構文が使えればよいです。
- Pythonライブラリの requests, BeautifulSoup, pandas を使いこなせると一気に実用的になります。
- robots.txtと利用規約
- スクレイピングが禁止されているサイトもあります。
- 「アクセスが許可されているか(robots.txt)」「著作権的に問題ないか」は事前にチェックが必要です。
今回のまとめ
スクレイピングは、Web上に公開されている情報を定期的かつ自動的に収集するための有効な手段です。手作業での確認や転記といった手間を省き、必要な情報を効率よく整理・蓄積できる点は、業務効率化やデータ活用の観点からも大きなメリットがあります。また、AIやデータ分析に取り組む際の前段として、データを自分で集める仕組みを構築できるといったことも重要なポイントです。
次回からは、Pythonの代表的なスクレイピングライブラリである requests と BeautifulSoup を使い、実際にWebページから情報を取得する方法を解説します。環境構築の手順から、HTML構造の基本的な読み取り方、ライブラリの役割分担までを押さえながら、再現できる形で進めていきましょう。スクレイピングの基礎を確実に身につけ、今後の自動化やデータ活用へとつなげていきましょう。次回もお楽しみに。
