【Python業界まとめ】2022年の振り返りと、2023年の展望

こんにちは、Pythonエンジニア育成推進協会 顧問理事の寺田です。私は試験の問題策定とコミュニティ連携を行う立場です。

これまでマイナビニュースサイトでコラムの連載を行ってきましたが、2月からはこちらの公式サイトに掲載することになりました。ご興味がある方は是非ご一読ください。

さて、今回のコラムでは昨年のPython業界の動向と、今年の展望についてお話したいと思います。

■Pythonイベントの去年と今年

もともとPython自体がコミュニティで生まれ、開発され、育ってきたものであるため、コミュニティが重視されたプログラミング言語になっています。そのため、直接会って会話ができなかったこの2年間によってどうなるのか、どうなったのか、どうなっていくのかという変化が始まった年のようにも思います。

2022年コミュニティの活動が復活したものの、拡大とまではいかず

昨年も特に勉強会やミートアップのような小さなイベントはオンラインとオフラインのハイブリッドが多い印象ですが、昨年はPyCon Kyushu2022(1月・熊本)や、PyCon US(4月・アメリカ)、EuroPython 2022(7月・アイルランド)、PyCon JP(10月・東京)といった大型の現地開催イベントが多数開催されました。

久々に大きなイベントに参加して感じたのは、主催者やオーガナイザが頑張って開催したものの、現地開催ができなかった2年間のブランクは非常に大きく、参加者が大幅に減っていることを感じるものでした。

それを特に感じたのはPyCon USで、以前であればいろんな国から参加者が訪れていることがわかるものでしたが、昨年はその多様性がなくなっていました。具体的に言えば、以前はアジア圏からだけでも各国からの参加がありましたが、昨年のイベントでは日本人はいても、それ以外の国からはあまり参加していないという状況で、大型イベントでも、まだまだ復活はこれからという印象でした。

オンライン活用でコアデベロッパーが増員、グイド氏復帰も

とはいえ、オンラインがコミュニケーションの中心となったことは、悪いことばかりではありません。

いい意味で時間ができ、世界中の人々がオンラインでの活動が上手になったことで、多くの人に自由に使える時間が増えました。

その結果、主に海外に在住するPythonのコアデベロッパーの中で、つながりがある者同士で開発を行うといったやり取りが盛んに行われたようで、この期間にPythonは進化したのではないかなと思います。

また、コアデベロッパー向けのトレーニングが順調に進んだようで、コロナ禍に入ってからコアデベロッパーとなった人が増えたと聞いています。

さらに、Pythonの生みの親であるグイド・ヴァンロッサム氏は引退を決めていましたが、この時代においてもう一度やってみようと、新たな気持ちでアイデアとエネルギーを持って積極的にコアデベロッパーとして再度参加されています。

2023年のイベント課題は“新しい発見と出会い”、開催予定は?

この2年間で、オフラインイベントやコミュニティに参加することで得られる経験、例えば開発者同士で仲良くなったり、他の開発者とのつながりを持ったり、知識を得たり、コミュニティを主導することによる経験を得るといった、経験やそこから得た知識などを開発に生かすという体験をしていない人が増えています。

そのため、そこで得る楽しさを知らない人にとっては、お金と時間をかけてまでイベントに来ようとは思わないようです。

その結果、人と人とのつながりが薄くなり、新しい人との出会いがなかなかないこの状況は多くの人にとってマイナスになる部分と言えます。コミュニティやイベントの運営者にとっても難しいと考える部分であり、この状況を不安に思う運営者は多くいます。

ただ、運営側としてできることは、「継続する」ことで、さらにその中で何か新しい試みを取り入れていくという事ではないかと思います。

例えば、当協会でもそうですが、最近はYouTubeなどの動画を投稿することで広く情報を発信することができます。こうした、オンラインならではの良さを取り入れつつ、オフラインとの融合を図り、新しい出会いや新しい発見を得ていけるよう、両者ともに求めてもらえればいいなと感じています。

ちなみに、2023年は10月に日本で大きなPyCon イベントが予定されていますし、海外では4月にアメリカでPyCon USが開催される予定です。他にも計画されているイベントがあると聞き及んでいますので、さまざまなイベントに参加してもらうことで、より学びを深めていって欲しいと考えています。

■Pythonを取り巻く状況の変化と、Python初学者が目指す方向

近年DX化やAIブームにより、Pythonを学びたい人は増えていますし、活躍の場面も広がりを見せています。

高校での情報科目の必須化も始まっていますが、そうでなくともプログラミングによって何かができる世界は広がっていると感じている人が多く、今後もプログラミング言語を学ぶというニーズは継続して増えていくだろうと考えています。

私個人としては、2022年4月から大学でPythonの基礎やデータ分析を教えるという機会を得ました。

昨今はデータ分析のニーズが非常に高く、プログラミングができるか否かによって自分のできる範囲の広がりが違いますし、授業を受ける大学生自身もそれを肌で感じているように見受けられました。授業を受けた学生のほとんどが全くの初心者からのスタートでしたが、非常に積極的に向き合ってくれたと感じています。

Pythonは、Python自体の仕様が比較的安定しており、様々なサンプルが世の中にあふれているため、データ分析はもちろんですが、全般的に広い範囲でいろんなものを勉強したいときに良い選択だと思います。

特に機械学習やAI系、ChatGPT、自然言語処理などの分野で成果が出ているという印象です。

プログラミングの知識自体は実のところそう多く必要なくできてしまう部分はありますが、その一方でプログラミングの知識があればより深く理解でき、深く使いこなすことができる世界が広がっています。

例えば、誰かが作ったディープラーニングのモデルを使う際、そのインターフェースとしてPythonを使うこともできます。その際、Pythonの技術があればあるほど、使いこなせる範囲が広がりますので、そういった意味でもPythonを学ぶというのはおすすめできます。

とはいえ、プログラミングの世界は幅が広いため、何を学ぶか、どこが終わりか、何から始めたらいいかはなかなか見えてこない人は多いと思います。

そうした人はまず、基礎を学び、そして、データ分析やWeb、IoTなど何でもいいので、自分の作りたいものを見つけて、ひとつの物を作りあげてみてください。一度やり切ったことは知識として定着し、プログラミング言語から一時的に離れても戻ってきやすくなります。

そして、学びの中で、もし、学びがなかなか進まず、不安になったときにはコミュニティに参加して友人を得たり、動画やブログなどのオンライン上で提供されている情報を上手く活用したりと勉強してみてください。

■2023年のPython計画

Pythonは毎年10月に、マイナーバージョンアップが行われます。現在の最新バージョンは2022年10月に公開された3.11です。

Python バージョン3.11の注目ポイントまとめ

一番のポイントはスピードアップです。もちろん計測方法やコードの中身によって速度改善具合に違いはありますが。高速化されていることは間違いありません。

他の注目ポイントとしては型ヒントをつけやすくなったこと、エラーメッセージがわかりやすいものになったことなど、これまで望まれてきた機能が3.11で取り込まれています。

2023年10月に公開される3.12、何か変わる?

3.12の詳細は確定していないので最終的にどうなるかはまだわかりませんが、今後もスピードアップとエラーメッセージの改善、型ヒント機能の強化などは継続されて行われていくだろうという期待感が持たれています。

また、それ以外に予定されているものとしてはバッテリーインクルードという考え方です。

Pythonは標準ライブラリが非常に豊富で、追加パッケージなしでもたくさんのことが出来るという特徴があります。

この標準ライブラリの中にはCGIライブラリなどの非常に古いライブラリも含まれており、これらはバージョンアップの時にそのまま残されてきました。ですが、こうした残されてきた古いライブラリの中には使われることがそんなになくなってきたものがあり、メンテナンスコストに影響を及ぼしています。

そこで3.13でそうした不要となったライブラリを除去する作業を進めるために、現在整理したりなどの作業が進められています。

これはPythonの機能を完全に失うというものではなく、あくまで機能を整理することでPython自体のメンテナンス性を上げることを目的としてます。もちろん代替となる機能を持つライブラリは存在していますので、今後はサードパーティ製パッケージを上手く活用していく方向になると予想しています。

さいごに

Python3台であれば、基本的な機能の互換性は保たれており、基本的に5年間はサポートが受けられます。

そのため、新しいバージョンが出たからと言ってすぐに新しいものに飛びつく必要はありませんし、使えなくなるのではないかと怖がる必要はありません。

逆にライブラリの進化の方が速いので、そちらの方を追う方が大変かもしれません。

私自身はまだ3.9をメインで使用していますし、そう困ることはありませんので、必要なタイミングで必要に応じてバージョンアップしていけばいいと思います。

さて最後になりますが、今年3月にはPython3エンジニア認定基礎試験の公式問題集が発売されます。

Amazonですでに予約できるようになっていますので、必要な方はぜひご購入下さい。

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